福岡高等裁判所 昭和43年(ネ)674号 判決 1969年3月20日
主文
原判決を取消す。
被控訴人は控訴人に対して金一五万円及びこれに対する昭和四三年五月三日以降支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。
訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。
事実
控訴人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述及び証拠の関係は左記を附加するほか原判決事実摘示の通りであるからこれを全部引用する。
控訴人は、当審において「賃料債権に対する差押取立命令が訴外横山一江(差押債務者)や被控訴人(第三債務者)に送達された以上、訴外横山は控訴人(差押債権者)を害する処分は為し得ず、仮に被控訴人主張の如く賃料債務の免除があつたとしても控訴人に対抗できない。」と陳述した
理由
当裁判所は、控訴人の本訴請求は認容せらるべきものと判断する。その理由は、原判決理由の第一行目から第七行目迄に説示されているところを引用するほか左記の通りこれを附加する。
一 しかし、継続収入の債権の差押は、差押債権額を限度として、同一の債権関係から差押後に収入すべき金額に及ぶ(民事訴訟法第六〇四条)から、基本たる賃貸借契約が解除により消滅した場合等は格別、差押にかかる賃料債権のみを免除しても、それが差押債権者を害する限度において同債権者に対抗し得ないことが明らかである。従つて、差押債務者訴外横山の第三債務者被控訴人に対する前記認定の賃料債務の免除は控訴人に対抗し得ず、被控訴人の抗弁は採用できない。
二 そうすると被控訴人は控訴人に対して前記認定の一カ月金二万五、〇〇〇円の割合による昭和四二年九月分以降昭和四三年二月分迄六カ月分合計金一五万円の本件家賃金及びこれに対する履行期到来の後であり本件訴状にかわる準備書面が被控訴人に送達された日の翌日であることが記録上明らかな昭和四三年五月三日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。
よつてこれと異なる原判決は失当で本件控訴は理由があるから原判決を取消し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第八九条を適用して主文の通り判決する。